【前編】「どうしてウチの子が……」を防ぐための〝猫の腎臓病〟入門

【前編】「どうしてウチの子が……」を防ぐための〝猫の腎臓病〟入門

【1】猫の腎ケアを怠っていませんか?

「10歳を過ぎた猫の3頭に1頭が腎臓病を罹患している」

あなたの愛猫も腎臓病に苦しんでいるかもしれません。猫にとって腎臓病は宿命とも言える病です。国際猫医学会のガイドラインでは、10歳を過ぎた猫の3頭に1頭、15歳を過ぎると8割が罹患しているというデータもあり、死因ではがんに次いで2位です。

しかし、調査によれば、「猫が慢性腎臓病になりやすいことを認知している」のは、猫オーナーのうちわずか35%程度。このギャップを埋めないかぎり、多くの猫が腎臓病で苦しみつづけることになります。

そこで、私たち株式会社NEXT NEW WORLDは、獣医師や専門家の方のお話を伺い、「猫が腎臓病で苦しまない世界」を目指して、さまざまなノウハウを提供していきます。第一弾となる今回は、「なぜ猫は腎臓病になりやすいのか」を具体的に説明していこうと思います。

弊社の代表自身、長年連れ添った愛猫を腎臓病で亡くしており、その後悔から事業を立ち上げました。皆さんが同じ後悔を抱かないように、多くの知見をアップしていきますので、最後まで読んでいただければ幸いです。いいね、フォローもよろしくお願いいたします。

【2】猫が腎臓病を避けられないワケ

そもそも猫はなぜ、腎臓病になりやすいのでしょうか。それには「猫の祖先」が大きく関係しています。

腎臓は血液から尿素などの老廃物をこしとるフィルターの役割を担い、尿を生成し体液量などを一定に保っています。猫の祖先「リビアヤマネコ」は水の少ない砂漠で暮らしていました。水の少ない環境、少ない尿量で体調を保つために、濃縮尿をつくれるよう猫の腎機能は発達しました。

そうして、体に取り込んだ水を再度吸収する機能を高めた結果、腎臓のフィルター「ネフロン」が消耗し、壊れやすくなってしまったのです。そもそも、猫のネフロンは人間や犬と比べ、数が少ないことも腎臓を悪くする要因の一つと考えられています。

また、猫は肉食動物です。たんぱく質を多く摂るほど尿素やアンモニアのような老廃物が多くなり、腎臓に負担をかけてしまいます。

つまり、猫は水の少ない環境で生き抜くために、腎臓の機能を高めたがゆえに、腎臓を痛めやすくなってしまったのです。

【3】腎機能の70%が失われないと症状が現れない

猫の腎臓病対策で大切なのは、腎臓病の初期段階で気づくこと。しかし、猫の腎臓病を早期発見することはとても難しいです。というのも、腎臓病の症状が目に見えて現れるのは、腎機能の約70%が失われた段階だからです。

猫の腎臓病のステージは、以下のようにまとめられます。

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猫の腎臓病のステージ

ステージ1~2の段階では、症状はほとんど確認できません。さらに、猫は不調を隠す動物でもあります。多少の食欲不振なども、睡眠や遊びでごまかそうとしてしまうのです。

もちろん病気のことを気にしすぎても、愛猫との生活が息苦しくなってしまいます。神経質すぎると、猫もその様子を察して、ストレスを溜め込んでしまうこともあります。

ですが、病院での血液検査を年1回は受けるよう心がけてほしいです。高齢猫の場合は、年2回行くとよいでしょう。自分のなわばりから離れるのを嫌がる猫も多いですが、猫は自分で不調を訴え病院に行くことはできません。私たちが意識して病院に連れていくことがもっとも大切です。

【4】1日5分でできる「腎臓病チェック」法

自宅でチェックしておくとよい項目をみていきましょう。

①飲水量がどの程度か

多飲は腎臓病のサインです。体重1kgあたり、40~60mlが目安。70ml超が2日以上続いたり、お皿がいつもより早く空になったりする場合は、病院での検査をおすすめします。

②尿の様子はどうか

多尿も腎臓病のサイン。トイレが湿ったままの場合は注意が必要でしょう。いつもより尿塊が大きいというのも病気のサインです。

③体重の増減はどの程度か

1カ月で5%以上の減少は病気のサイン。筋肉量が減ると、血液検査のクレアチニンが過小評価されるため、要注意です。

④口臭、毛並みはどのような状態か

腎臓が衰えると、アンモニアやリンがこしとられにくくなり、アンモニア・金属臭が口からするようになります。また、血流の悪化により、毛並みが悪くなり、ぱさついたような印象を受けます。

合わせて1日5分程度で完了できるのではないでしょうか。上記のチェック項目を意識するだけで、病院へ行くタイミングが1カ月も早くなるとも言われていますので、ぜひ実践してみてください。

【5】前編のまとめ

日々のチェックで腎臓病を発見できた場合、病院での治療や自宅でのケアが必要になります。腎臓病治療やケアの現在はどのようなものなのか、後編でみていきたいと思います。

今回のポイント

  • 10歳以上の猫の3頭に1頭が「腎臓病」

  • 猫は、砂漠に暮らした「リビアヤマネコ」が祖先。だからこそ、腎臓を壊しやすい

  • 猫の腎臓病は、腎機能の約7割が失われないと症状が現れない

  • 日々の飲量、尿量、体重、口臭、毛並みのチェックが重要

「どうしてウチの子が……」という後悔をしないためにも、まずは日々のチェックを怠らないようにしましょう。それでは、後編でまたお会いしましょう。

●監修
苅谷動物病院グループ市川総合病院 顧問
日本獣医再生医療学会 常務理事
どうぶつ予防医療協会 代表理事
伊藤裕行